宮城・蔵王の遠刈田温泉にある、全10室のこぢんまりとした宿です。館内は畳敷きで、フロントのすぐ脇にBARがある——という構えからも分かるとおり、この宿の性格はオールインクルーシブにあります。生ビールもハイボールもワインも自家製サングリアも宿代に含まれていて、夕食中の飲みものにも追加料金がかかりません。私たちは2022年8月と2023年10月の2回泊まりました。オールインクルーシブの温泉宿に泊まったのは、このときが初めてでした。

チェックインまで
宿は遠刈田の温泉街の中にあります。1回目は畳敷きの和室でした。

温泉街の中に建っているぶん、部屋からの景色は期待しないほうがいいです。1回目の滞在では外の景色は特に見えませんでした。ただ、これは階によって変わります。
部屋

2回目は3階の部屋で、ベッドがあって広めのつくりでした。1回目の部屋にはマッサージ機がありましたが、3階の部屋にはありません。部屋によって設備が違うので、こだわりがあるなら予約時に確認しておくといいと思います。
部屋に入ってすぐのところにトイレがあり、便座は自動で開くタイプ。味のある引き出しの中にコップやコーヒー、お茶が用意されていて、テレビの下にセキュリティボックスと冷蔵庫があります。冷蔵庫にはペットボトルの水と冷えたグラス。
そして3階に泊まったことで、景色の話が変わりました。窓の向こうに蔵王の山並みが見えて、10月の滞在では稜線にすでに雪が積もっている部分がありました。朝には虹も出て、温泉街の屋根の向こうに山と虹が並ぶ——景観は期待していなかったので、これは完全に予想外の当たりでした。

オールインクルーシブ — 夕食前はBARとフリードリンクコーナーで
部屋に落ち着いたら、あとは夕食まで自由に飲めます。この宿のオールインクルーシブの中心は、フロント脇のBARと、その奥のフリードリンクコーナーです。


スパークリングワインと自家製サングリアは、金色のクーラーに冷えているものから自分で注ぎます。

オールインクルーシブについて正直なところを書いておくと、追加料金がかからないとはいえ、そこまでお酒が強くないと結局2〜3杯で終わってしまいます。飲み放題の元を取りにいくタイプの宿というより、「飲みものの値段を気にせず食事に集中できる」ことに価値がある宿だと思います。
風呂 — 貸切風呂は空いていれば何度でも
この宿の風呂で一番うれしいのは、貸切風呂が予約不要で、空いていれば何度でも入れることです。1回の利用は40分以内という決まりだけあります。
貸切風呂は3つあって、浴室ごとに性格がはっきり違います。「紺碧の湯」は信楽焼の陶器を使った風呂。「もも花の湯」はこの宿で唯一の半露天で、外の空気を感じながら入れます。「風みどりの湯」は岩風呂で、一人で入るには少し贅沢な広さでした。人気の浴室は時間帯によって埋まっているので、空いているところから順に入っていく、という使い方になります。


大浴場は「南天の湯」と「天色の湯」の2つで、男女入れ替え制です。大正時代の色ガラスから光が差し込む、昔の湯小屋をイメージしたつくりだそうです。レトロな窓とステンドグラスが印象的で、ロゴのようなステンドグラスが湯船の水面にも映っていました。大きな浴槽は半分が半身浴用の浅いつくりになっていて、熱めの丸いお湯にはちょうど良く浸かってくつろげます。

温泉街の中の宿なので浴場の外は柵で覆われていて眺望はありませんが、外の風は感じられます。
食事 — 蔵王の食材と、〆のはらこめし
夕食は18時から。オールインクルーシブなので、食事中のドリンクにも追加料金はかかりません。
先付けは「蔵王彩り前菜」。サーモンアボカドのポキ、蔵王豚肉JAPAN Xのパテドカンパーニュ、そして「燻り三兄弟」——燻製ポテトサラダ、燻りガッコ、蔵王産豚肉のベーコン。前菜はすべておいしかったのですが、この燻り三兄弟、とくに蔵王産豚肉のベーコンが際立っていました。スパークリングワインと梅酒で乾杯。

続くオニオンスープは味が濃くておいしい。仙台麩とチーズが入っていました。夕食の部屋にはおばんざいやおでんなど、セルフで取れる料理も並びます。

- お造り — 見るからにおいしそうな色の鮪。口の中でとろけました。8月は三陸産の雲丹も出て、甘味があって臭みもなく絶品でした
- 揚げ物 — 大忠名物の「包み揚げ」。名物料理の名にふさわしく、本当においしくて印象に残った一品です。2回目は前回より皮が厚くて味が染み込んでいるように感じました
- 野菜料理 — きのこと海老のアヒージョ。バケットを投入して味を染み込ませます。油がかなりパチパチと鍋の外に飛ぶので、お品書きは避難させたほうがいいです
- 魚料理 — メバルの煮魚(8月)
- 肉料理 — 蔵王牛のサーロインステーキ。めんこちゃんニンニクと、岩出山 中鉢豆腐店の厚揚げを一緒に焼きます。均等に焼くため裏表を確認しながら、焼き加減のいいものから食べていく。添えられたワサビと醤油タレで食べるとあっさりして、脂の多い肉でもある程度の量をおいしく食べられます



〆は、10月なら釜炊きの「はらこめし」。鮭のアラから取った出汁で炊いたご飯に、いくらと鮭をのせた名物ご飯です。ここまでで大分お腹は膨れていましたが、これを楽しみにしていたので別腹でした。お味噌汁は仙台宮町「阿部幸商店」の仙台味噌で作ったものとのこと。

デザートは杏仁豆腐に「ゼネラル・レクラーク」という洋梨がのったもの(10月)、みたらしクリームのミルクプリンやティラミス(8月)。
朝食
朝食の主なメニューは朝カレー、女将の温泉たまご、出来立ての寄せ豆腐、こだわりの梅干しなど。具沢山の季節のお味噌汁は、前日にお酒を飲んだ翌朝ほどおいしく感じます。

お食事処はのんびり食べていたらほぼ人がいなくなっていました。
朝風呂もひととおり回れます。前日に入っていない貸切風呂が空いていれば、そちらから。
お土産の女将の温泉たまごは数量限定なので、欲しいなら早めに確保しておくのがおすすめです。
まとめ — こんな人におすすめ
全10室という規模の小ささが、そのまま体験の質になっている宿です。貸切風呂が予約不要で何度でも入れるのも、10室だから成立する運用だと思います。浴室ごとに陶器・岩・半露天と表情が違うので、滞在中に湯めぐりをしているような感覚になります。
温泉街の中にあるので眺望は基本的に期待できませんが、私たちが泊まった3階の部屋からは蔵王の山並みが見えました。景色も欲しいなら、予約時に階を相談する価値があります。
食事は蔵王の食材を軸にした構成で、名物の包み揚げと、秋なら釜炊きのはらこめしが目当てになります。お酒をよく飲む人ならオールインクルーシブの恩恵は大きいですが、そうでなくても「食事中の飲みものを気にしなくていい」という気楽さは十分に効きます。
同じ遠刈田温泉には、この宿と関連するオーベルジュ 別邸山風木があります。街中の大忠に対して、山風木は街から少し離れた静かな立地。同じ遠刈田でまったく違う滞在ができるので、2回行くなら両方試すのがおすすめです。